大雪のために高速道路の車が長時間にわたって立ち往生したり、大雪や暴風雪への警報が出されたり、雪かき中の死亡事故が頻発したり…。この冬は、これまで以上に豪雪が私たちの暮らしを脅かしています。しかし、疑問に思った方もいるのではないでしょうか?「地球が温暖化しているなら、雪は減るんじゃないの?」実は専門家は、地球温暖化によって、逆に冬の間の大雪被害が増える可能性を指摘しています。そのメカニズムとは?そして、温暖化による気象災害から私たちの暮らしを守るために、今できることは?

大雪と地球温暖化の関係は?
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そもそも地球温暖化とは?

二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、太陽から届いた地面の熱を溜め込み、地球全体の平均気温が上昇することです。温室効果ガスは、英語では「グリーンハウスガス」と呼ばれますが、野菜を育てるグリーンハウスのシートのように、地球を温めてしまっています。

産業革命以降、化石燃料を燃やしてCO2を大量に排出するようになってから現在までに、すでに地球の平均気温は1.2度、上昇してしまいました*1。地球温暖化を止めるための国際協定「パリ協定」では、これ以上の悪化を抑えるために、気温上昇を1.5度未満にとどるための行動を、各国に求めています。

地球全体の気候自体が温暖化によって様々な影響を受けて変わり、私たち人間の暮らしや動物たちの命を脅かすようになってきたため、「気候変動」「気候危機」とも言われます。

地球温暖化で起きること

1度の気温上昇によって、すでに私たちの暮らしや生態系に深刻な影響が出ています。

北極や南極の氷が溶け、シロクマなどの北極圏の動物たちは絶滅の危機に瀕し、海水温が上昇することで、サンゴ礁の白化現象が進んでいます。

温暖化で氷が溶けることでシロクマはエサの確保や繁殖が困難になる
北極だけに暮らすシロクマ。氷が溶けることで、エサの確保や繁殖が困難に。

また、干ばつによって、オーストラリアの雑木林の火災が広がり、コアラを含む30億匹もの野生の命が奪われました*2。 アメリカ西海岸のカリフォルニア州やオレゴン州でも、前例のない規模での山火事が広がりました*3

地球温暖化で乾燥した地域で干ばつが進み、オーストラリアでは山火事が燃え広がった
オーストラリアの火災で保護されたフクロネズミ。2020年1月

豪雨災害も深刻化しています。専門家によれば、1度上昇するごとに、大気中の水蒸気が7%増えます。梅雨前線や台風が大気中の水蒸気を取り込み、集中豪雨を発生させるリスクが高まります。例えば2018年7月の西日本豪雨について、気象庁も地球温暖化の進行に伴う長期的な大気中の水蒸気の増加によって降水量が増加した可能性を指摘しています*4

地球温暖化で豪雨災害の被害が増えている
熊本県人吉市で、豪雨に襲われた民家。2020年7月

地球温暖化と雪の関係は?

今回注目したいのは、地球温暖化と雪の関係です。

大気中の水蒸気量が多いと、豪雨や台風での雨量がさらに上乗せされるのと同様に、気温が0度を下回る場合、大気中に水蒸気量が多いほど、大雪も起こりやすくなります*5

気象庁は、関越自動車道の立ち往生を引き起こした2020年12月14日から21日の日本海側の大雪について、日本海の海面水温が平年より1~2度高く、大気中に含まれる水蒸気が多い状態で、強い寒気が水蒸気を取り込んで日本列島に近づいたことが原因と指摘しています*6

大雪と地球温暖化の関係は?
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政府は、温暖化と降雪の複雑な関係について、より本格的な研究に乗り出すことを決めています。

1晩の間に大雪が降る「ドカ雪」

とはいえ、全国的に降雪が増えるわけではありません。例えば、大陸側から来る寒気が太平洋側に流れにくくなることで、東京で雪景色を見ることはめずらしくなると言われています。

しかし、冷え込みやすい本州の山間部や北海道の内陸部では、大気中に増えた水蒸気が雪として降るため、10年や30年に1度クラスの極端な大雪がかえって増えると予測されます*7

1日、1晩の間に大量に降る雪を指して「ドカ雪」という言葉もあるようですが、こうしたドカ雪による雪かきの負担や孤立のリスクなど、暮らしへのさらなる影響が出ることが懸念されます。

大雪と地球温暖化の関係は?
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私たちにできること

注目すべきなのは、すでに1度の気温上昇で、こうした影響が出ているということです。1.5度から2度まで上昇した世界では、次の世代の子どもたちや動物たちは、どんな暮らしを強いられるでしょうか?

豪雪や豪雨の被害が悪化するのを抑え、私たちの命を守るためには、今からでもできることがあります。

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気温上昇を1.5度までに抑えるためには、2050年までに必ずCO2の排出を実質ゼロにしなければならないと訴えます。

日本政府は、2020年10月に、2050年までのCO2排出実質ゼロを宣言し、ようやくスタート地点に立ちました。今すぐに実現しなければいけないのは、CO2を最も多く排出する発電方法の、石炭火力発電をやめ、自然エネルギー100%を目指すことです。

地球温暖化を抑えるため自然エネルギー100%へ
35,000世帯が1年に使う電力を発電することができる、福島県の風力発電所。2016年8月

発電なんて、私たちは直接影響を与えられないと思うかもしれませんが、実は、家やお店、オフィスなどで使う電力を、自然エネルギー100%に変えることができます。電気代として払うお金は、自然エネルギーへの応援になります。ぜひ2021年は、自然エネルギーの電気に乗り換えませんか?このサイトから、お住まいの地域で自然エネルギー100%の電気を提供する、または100%を目指す電力会社を探すことができます。

パワーシフト:未来を作る電気の作り方

 

そして、CO2を蓄えて地球の気温を安定させてくれている森や海を守り、回復させることも重要です。グリーンピースは、世界55の国と地域で活動する国際的なネットワークを活かして、世界の海の30%を保護区にして開発から守る国際条約を実現するために、各国政府や国連への働きかけを続けています。また、アマゾンの森を開発から守るために、政府への働きかけを行っています。毎日の暮らしでできる環境に優しいアクションに加えて、社会の仕組み自体をよりサステナブルに変えるために、一緒に行動しませんか?

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