国連環境計画(UN Environment Programme)が発表した『Food Waste Index Report 2021』によると、2019年時点での世界全体の食品ロス(Food waste)は9.3億トン、そしてその6割が家庭から出ていることが明らかになりました*1。SDGs(持続可能な開発目標)でも、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる」と目標が定められています*2

国連の報告書をもとに、食品ロスの問題点気候変動と食品ロスの関係、そして私たちにできることについて考えてみたいと思います。

なぜ食品ロスが発生するの?

家庭やレストランなどでは、食べ残しや賞味期限切れによる廃棄、スーパーなどの小売では、売れ残りや不揃いな形やキズがあるなどの理由で販売されない「規格外」の食べ物が廃棄されるなどの理由で、食品ロスが発生します*3

さきほどの国連の報告書では、日本の家庭から出る食品ロスは、1人当たり年間64キロと推計されています(年間では816万トンとなり、毎分トラック約1台分の食品が廃棄される計算です)。これまでの推計は48kgと言われていたので*4、日本政府の推計よりも多い数値となりました。

食べ残しはほとんどないといった家庭やレストランなどでも、調理のために皮をむいたり、芯をとったり・・・これらも食品ロスになってしまいます。

(出典:Shutterstock)

なぜ食品ロスが問題なの?

  1. 世界で3番目に大きな温室効果ガス「排出国
    世界の温室効果ガス排出の8〜10%は、消費されなかった食品に関連していると推計されています。フードロス(何にも再利用されないまま、燃やされたり廃棄される家畜や人間が食べることのできる作物と食品の全量)と食品ロス(製造や小売、家庭での食品サプライチェーンから排除された食品および関連する食用不可部分)が1つの国だとしたら、世界トップ3の排出国になるんです(同UNEP報告書より)。ごみとして出された食べ物は、廃棄のための運搬や焼却などにより、温室効果ガスが排出されるからです*5。生ごみの約80%は水分で燃えにくく、生ごみ1トンあたり、760リットルの助燃剤(重油)が使われているそうです*6
  2. 世界の不平等な食糧配給
    温室効果ガスは廃棄に限らず、食べ物がテーブルに届くまでの生産や加工、流通などの過程でも温室効果ガスが排出されています*7。気候変動を悪化させないためには、家庭や事業分野で食品ロスを減らすことも大切なんです。

    世界では、世界の約10人にひとりに相当する8億2,000万人以上の飢餓状態の人々が十分な食べ物を得ることができない一方*8、世界中でつくられた食べ物の17%が廃棄されていることが見えてきました(同UNEP報告書より)。廃棄を減らし、必要なところで生産したり、必要な人に必要な分が行き届くよう世界の食料システムの修復していくことが必要です。
  3. 食べ物を輸入に頼っているのに、廃棄してしまう日本の食糧
    日本の食料自給率は、カロリーベースでは37%です。つまり、63%は輸入に頼っているんです。温室効果ガスを出して海を渡って日本に届いた食べ物まで含めて、年間64キロも捨ててしまうのは、単純にもったいない! ちなみに、家庭で1番捨てられているのは「野菜類」が半数以上を占めていました*9

どうしたら食品ロスを減らせる?

廃棄を減らす方法を知って実践してみること、そして温室効果ガスの排出がより少ないお買い物が大事ですね!

  1. 「ついでに買っておこう」から「必要なのはこれだけ」のお買い物へ
    食品の購入時には事前に冷蔵庫の中の在庫を確認しておくだけでも、使い切れなくて捨ててしまう可能性は低くなります。1週間の食事メニューを計画してからお買い物して、1週間で使い切るのも良い方法だそうです。例えば農家さんから1週間に1度など定期的に季節野菜1箱を送ってもらって、乗り切るという方法も! 地産地消ができれば、輸送による温室効果ガス排出も減らせます
  2. ゼロウェイストレシピに挑戦!
    「ゼロウェイストレシピ」と検索するだけでも、たくさんレシピが出てきます。例えば、里芋の皮をカリカリに炒めて食べるなど、野菜の皮も美味しく食べる方法があります。オーガニックのお野菜を使っていたら、ほとんどの野菜で皮むきが不要になりますよ。ついでに自宅でコンポストも始めてみると、捨てる必要がほとんどなくなります。
  3. 廃棄寸前の食べ物を積極的に購入してみる
    日本でもフードシェアリングサービス「TABETE*10」や、廃棄寸前の食品を販売する店舗「エコイート*11」、賞味期限間近やパッケージ変更などの食品を販売する「Otameshi*12」などの取り組みが始まっています。
    フランスでは、食品の廃棄や寄付を義務付ける食品ロス削減法案が適用され*13、家庭だけではなくスーパーや飲食店から出るロスの削減を進めていくことが必須になっています。
(出典:Shutterstock)

食品ロスに関する正確な統計を持っていない国もあり、世界規模で食品ロスの全容を明らかにするのは難しいようですが、今回の報告書では、これまで問題視されてきた、スーパーやレストランなどの事業系食品ロスよりも、家庭からの食品ロスがより大きいことが明らかになりました。また、高所得各国と低所得各国間の食品ロスの量についても、あまり変わらないと言える数値が見えてきました。

誰もが必要な食べ物。その食べ物を誰がどのようにつくっていて、誰がどうやって自分の手元まで運んでくれているのか、知っていますか? それを知れば、野菜やその他の食品が「捨てられるもの」ではなく、「捨てたくないもの」に変わっていくと思います。

忙しい日々のなかでも、そういった思いを大切にしていくことだけで、食品ロスに対する見方が変わっていくのではないでしょうか?

みなさんの実践している食品ロスレシピや知恵も、ぜひ教えてください!

2021年7月訂正:2019年時点での世界全体の食品ロスを「931万トン」と記載していましたが、正しくは「9.3億トン」でした。お詫びして訂正いたします。

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