ミツバチの大量死の一因であるネオニコチノイド系農薬を製造している住友化学の株主総会に昨日、出席してきました。この農薬(クロチアニジン)は日本では「ダントツ」「フルスウィング」「モリエート」などの商品名で販売されています。

※グリーンピースでは、ミツバチにも人体にも悪影響を与えるネオニコ系農薬を製造しているメーカーに対して、株主総会への参加・議決権行使などで直接訴えるため、住友化学の株式を最小単位で購入しています。

6月24日付で住友化学の会長・最高経営責任者から相談役に退いた米倉弘昌元経団連会長も同席する中、本社の東京住友ツインビルディングスで開かれた第133期株主総会では、壇上に40名ほどの取締役ら経営陣がずらりと揃い、事業報告などの説明がありました。そのあと、出席している株主からの質疑の時間があります。

十倉雅和社長から中期的な経営方針の発表もあり、その中では遺伝子組み換え種子を製造・販売している多国籍化学メーカーのモンサントとの業務提携も、引き続き強化するとの報告がありました。


問題のネオニコ系農薬の製造メーカーとしての責任は?

質疑の時間になり、グリーンピースですと告げたうえで、「この農薬は、ミツバチを保護するためにEUでは、2013年12月に一時的に使用禁止になったばかり。日本でもミツバチの被害が報告されており、ハチ被害を調査している農林水産省が先週発表した中間とりまとめでも、クロチアニジンが検出されたと報告がありました。問題の農薬の製造メーカーとして、名指しされることも増えているので、ネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの販売を自粛すべきと考えますが、十倉社長はどう考えますか」と質問しました。

これに対し、十倉雅和社長は以下のように回答しました。
・日本だけではなく世界各国に農薬の登録申請をするが、申請のためにはミツバチを含めた環境生物の影響データなどを取得し問題のない事を確認。このデータを日本やアメリカなどの当局によって評価され、安全に使用できると確認され登録されている。

・日本では10年近く、アメリカでは20年近くこの農薬は使われているが、当局は問題ないということで使用している。

次に、健康・農薬関連事業部門の西本常務が回答しました。

・EUからミツバチへの影響がどのくらいあるか、我々含めた製造メーカーに対して、EU当局が調査する、調べるということを今やっている。

・EUではこのような(一時的な使用制限)対応をとっているが、アメリカ、日本では、ネオニコチノイド系農薬を使ったから、ハチが大きく減っているという事例、直接の因果関係があるとは報告されていない。

と、まるで農林水産省のミツバチ被害の調査における中間報告で、クロチアニジンが検出されたことや、アメリカがミツバチなどの花粉媒介者保護に動き出した(次段落を参照)という事実から、無理やり目をそらせようとしているような回答でした。

世界の規制に取り残される日本

「EUの規制措置は行き過ぎ」と以前から反論している住友化学の経営陣の方々は、因果関係がはっきりしていない。当局は問題ないというから使っている。と、影響を認めません。 でも実は、「ダントツ」(クロチアニジンを使った住友化学の農薬)のラベルにははっきりと「ミツバチを放飼している地域では使用をさけてください」「マルハナバチに影響を及ぼす恐れがあるので注意して下さい。」と書かれているのです。(過去記事「ネコのノミとりにも? 身近にあるネオニコ商品」をご覧ください)

ミツバチへの影響が決定的になってから規制するのでは本当に手遅れです。さらに、問題ないと言っていたアメリカでは、オバマ米大統領が、ミツバチの保護に動き出したというニュースが先日(2014年6月20日)入ってきました。オバマ大統領は、環境保護庁に対して、ミツバチなどの花粉交配者に対する農薬の影響を検証するよう要請し、問題解決のために立ち上がりました。

その後は、他の株主から事業戦略や経営について言及があり、私を含めた3人の株主から質疑がありました。毎年来ている株主の方によると、毎年もっと多くの質問が出るが、今年は本当に少なかったとおっしゃっていました

 

<食と農業のリンク集>

カナダでも農業団体がネオニコチノイド系農薬の5年間のモラトリアムを議会に提言(2014-6-2)
農水省がおかしい? GMOやネオニコ農薬についての座談会(2014-05-29)

パブコメ募集中:新たなネオニコチノイド系農薬の審査が始まっています。(2014-05-27)

次の審査は非公開 ! ―ネオニコ系農薬の食品残留基準の再審議について(2014-05-20)

レポート「消えるハチ」日本語版。まとめてみました。(2014-04-18)

農薬が気になる野菜は何ですか? アンケートを実施します!(2014.4.16)

オランダ議会は、すべてのネオニコチノイド系農薬の使用禁止を票決。家庭でも使用禁止に。(2014/4/12)

ネコのノミとりにも? 身近にあるネオニコ商品(2014/4/7)

みんなの声が残留基準の緩和をとめています–クロチアニジンの残留基準の緩和が再審議になりました!(2014/4/7)

ネオニコ系農薬の残留基準が、国会でも問題に。(2014/3/13)

韓国でもネオニコ系農薬の禁止、始まっています! (2014/03/12)

ミツバチの大量死に関係するフィプロニル、処理された種子もEUで3月から使用禁止に(2014/3/6)

立ち上がった生産者たち――ネオニコ系農薬の使用禁止を訴え(2014/03/4)

署名12,739筆!ネオニコに反対する署名とメッセージを厚労省に提出しました(2014/2/18)

ミツバチがいなくなったら、いったいどうなるの?(2014/2/6)

残留農薬を増やさないで! 厚労省との緊急交渉の報告&署名を2月13日まで引き続き集めます!(2014/2/3)

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Discussion

 ミツバチを飼って60年になる。五年前から毎年 全滅して 種蜂を購入してきた。 一年は 飼育をやめたが 蜂蜜が不作で手に入らなかったので 啓蒙運動として  ダントツ 撲滅運動家の著書を拡大コピーして 幾月も 掲示したら、蜂が死ななくなった。茶の花に ダントツをかけるから悪いのだ。特に零細茶農家が この猛毒農薬を使っているようだ。茶農家の大半は超零細で 老農の死ぬのを待っている。悪いのは 死んだ経団連会長の米倉だ。

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がんばれ、ミツバチを守れ

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I keep Japanese honey bees as a hobby. I currently keep 4 colonies. This year for the first time, I noticed a large scale death of honey bees. Starting from very early June, each colony experienced thousands of deaths in 2 weeks. 1 colony was especially effected, losing probably half the population. Every day, bees kept dying inside and in front of the hive, creating a pile of dead bees. All of the bees died with their tongues sticking out, which is known to be a sign for pesticide death. I have no idea if they use neonicotinoid pesticides around here, but I am worried that our bees will eventually all die off. I sincerely hope that Japan will tighten it’s control over neonico pesticides.